BLOG
2020.08.08
Detail daily life of the architect
KAZUNORI MUKAI
基本設計プロセス ・ 伊勢の棲 向井一規建築設計工房
ゴールデンウィーク明けから2ケ月の間に「伊勢の棲」の基本設計をさせてもらいました。
70歳代のご夫婦が今までの住まいをお子さん家族に譲り、ご夫婦の「終の棲家」をつくる計画です。
自分たちだけの居心地でゆっくりのんびりと過ごされる棲家です。
今回は最終の M案 がまとまるまでスタディしたプロセスを案内します。
M案 外観 内観
ワンルームの大きなリビングダイニング(LD)を中心にして、両翼にそれぞれの機能を配置したプランです。
お持ちの家具を持っていかれるため、置き場所やボリューム感を検討するために家具模型も配置しています。
1、敷地となる土地は2つ候補があるため、まずはそれぞれで2案ずつ検討しました。
●お仕事の駐車場として使用している北側奥のスペースでの長方形敷地
A案:東のテラス庭と北の光庭を設け敷地全体を利用 B案:A案と同じゾーニングでLDをコンパクト化
・LDを軸に左右に機能的な室を配置 ・周辺の環境がの密なためコートハウスにしてプライバシィをまもる
☆ゾーニング(室の配置関係)は気に入ってもらう
〇外宮の緑を南西方向に臨むことが出来る正方形敷地
C案:2辺に水廻り南西にテラスを設けた正五角形 D案:LDの横に水廻りをを沿えた方形屋根が2つ連なる
・角地で目立つ場所でもあるため屋根を美しくデザイン ・南西の外宮の緑を臨むLD
☆C案の正五角形の形と綺麗な屋根を気に入ってもらう
2、長方形敷地の環境条件の悪さから外宮を臨む正方形敷地に決定
A案のゾーニングを正方形敷地に計画する *E案はプレゼンする前に破棄
F案:C案の五角形をベースにA案のゾーニングを設計 外宮を臨むテラスと小さな光庭をLDの両サイドに配置
☆微妙に傾いたLDと両サイドの室の関係性を気に入ってもらう
G案:A案をベースに正方形の敷地でコンパクトに設計 LDを中心にキッチンと水廻りを両サイドに配置
3、F案をベースに外観と屋根の形を再検討
H案:正面性を持った切妻屋根と両サイドを下屋にした外観
・LDの天井を高くし、ゆとりのある空間とサイドの機能性を持つ空間のメリハリができた
4、I,J,K案は、水廻り(トイレ・洗面・浴室)へのアプローチと使い勝手を再検討
・キッチンの勝手口や物置も追加検討する
5、外観をブラッシュアップしながらプランも細部まで詰める
M案:シンボル性を持った切妻屋根の両サイドに下屋のある外観 天井が高いLDを軸に機能性を備えた室を両サイドに配置
敷地を正方形に絞った中で、プランの機能性を持ちつつ、コンパクトで美しい形を検討するという難しいスタディでした。
これは、正方形敷地の「形・デザイン性」+長方形敷地の「機能性」を融合するための試行錯誤の繰り返しでした。
M案は、全てを兼ね備えたクライアントさんの満足する設計になりました。
現在、こだわりの素材を仕上げにした概算見積りの状況です。
2020.8.8
向井一規建築設計工房